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フォトグラムとは?

What is Photogram?

 フォトグラム(photogram)とは、感光紙の上に、直接物体を置き、光を当てて撮影する写真技法やその技法によって得られた写真のこと。光にあたった場所と当たらない影の場所の光の差で像を得るため、カメラやレンズなどの機材がなくても撮影できる写真である。

 

 最 古のものは、ウィリアム・ヘンリー・フォックス・ダルボット(William Henry Fox Talbot 1800-1877)が1834年頃に葉や花などを自ら発明した感光紙の上に置き太陽の光に当てたものであるとされる。またクリスチャン・シャート (Christian Schad 1894-1982)は、1918年頃、新聞の切り抜きや様々な印刷物を用いたコラージュを印画紙上で試み、この作品を「シャートグラフ」と呼んだ(※ 1)。

 

  「フォトグラム」という言葉は、バウハウスのマイスターであったラースロー・モホイ=ナジ(Laszlo Moholy-Nagy 1895-1946)の命名で、1922年に「フォトグラム」をはじめて制作している。ナジはこのフォトグラムによって、絵画における色や音楽における音の様に、光を造形素材として取り入れ、写真独自の表現を追求した(※2)。また同時期に、マン・レイ(Man Ray 1890-1976)は、1921年、現像作業中に、偶然フォトグラムの原理を発見し、この技法を自分の名前にちなんで「レイヨグラフ」と命名した。マ ン・レイは「写真は現在の記録を定着させるための方法であるという観念からすれば、ぼくは写真家であることにあまんずるけれども、その他の目的のために写 真を利用する場合は、ぼくは画家であることを自負したいのだ」という言葉を残し、写真を絵画に奉仕するメディアとして扱うのではなく、絵画と同じ次元で独 立した造形の一分野を開拓した。(※3) ナジとマン・レイは共に、芸術の新たな表現の可能性をフォトグラムに見出していた。日本では、瑛九が「フォトデッサン」とし、独特な世界観をフォトグラムで表した。

 

 

 

参考文献:

(※1:「光の化石―瑛九とフォトグラムの世界」展図録 埼玉県立近代美術館1997年)

(※2:バウハウス叢書8 絵画・写真・映画 L.MOHOLY-NAGY  利光巧 訳 中央公論美術出版)

(※3:ダダ論考 山中散生)

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